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天然アユが消えた 遡上目前に津波で全滅か 仙台・広瀬川 |
太平洋で育ち、仙台市の広瀬川を遡上(そじょう)する天然アユが今夏、姿を消した。3月下旬に始まる遡上に備えて河口周辺の浅瀬に集まった大群が東日本大震災の津波に襲われ、ほぼ全滅したものとみられている。資源が回復するまでには10年近くかかりそうだ。
「アユを餌にするカモメが飛んでいない。アユがいない証拠だ」
広瀬・名取川漁協理事の伊藤勝さん(58)は若林区河原町の河川敷から広瀬川を見つめ、嘆いた。7月1日の釣り解禁が迫り、例年ならばアユがあちこちで川面を飛び跳ねているのだが、この日は一度も見ることができなかった。
天然アユは9月から10月にかけ、広瀬川で産卵する。稚魚は川を下り、太平洋で冬を過ごす。川への遡上は3月下旬に始まり、6月中旬まで続く。
3月11日の東日本大震災は、広瀬川が注ぐ名取川の河口付近の浅瀬に、遡上前のアユが群れる時季と重なった。津波は海底の土砂ごと吸い上げて流れ込み、体長10センチ前後の若いアユは浜辺や内陸まで打ち上げられた。
伊藤さんは「アユは泳ぐ力が弱いため、深い海に生息できず、広範囲の回遊もできない。まだ河口に近づいていなかったアユも仙台平野沿いの浅瀬にいて、津波でほぼ全滅した」と話す。
漁協が今月19日、青葉区霊屋下周辺の広瀬川で調査した結果、捕獲したアユ50匹は全て放流された養殖アユで、天然アユはゼロだった。広瀬川の天然アユは200万匹とも言われるが、漁協は1%程度しか生き残らなかったとみている。
津波は名取川から広瀬川に入り、若林区の広瀬橋周辺までさかのぼったとされ、生き残ったアユに与える影響を懸念する声もある。
宮城教育大の棟方有宗准教授(生物学)は「アユが食べるコケが津波の泥で覆われ、生息できる範囲は震災前の半分になった。がれきなどから汚染物質が出ているかどうかも調査する必要がある」と語る。
資源の回復に向け、漁協は昨年捕獲した天然アユを人工授精させた稚魚を放流した。「生き残ったアユと合わせ、10年後には震災前の生息数まで回復させたい」(伊藤さん)と意気込んでいる。
河北新報社様情報です。
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